甘え下手
***

最初に目が覚めたのは私だった。

やっぱり自分のベッドじゃないせいもあったと思う。


そして情けないながらも、私は他人と同じベッドで寝るという経験に乏しいからだ。

阿比留さんの腕は朝まで私の身体にしっかりと巻きついていて、朝から胸の高鳴りと幸せを覚える。


こんなに砂糖漬けにされて大丈夫だろうか、私。

やっぱり冗談でした~なんてパッと手を離されたりしないだろうか。


慣れない環境についそんな疑いの目を向けてしまう悲しい性。


もぞもぞと身体を回転させて寝ている阿比留さんの顔を確認した。

私が動いても起きる気配は見せずにすやすやと眠っている。


阿比留さんは寝起きが悪いらしい。


またひとつ発見……と思いながら頬に手を伸ばしていたずらに肌に触れてみる。

男の人の肌って案外すべすべなんだな。


身近に男の人なんてお兄ちゃんぐらいしかいないけれど、それでもこんな風に顔を触ったりはしないもんな。
< 214 / 443 >

この作品をシェア

pagetop