甘え下手
私の抵抗が強くなっても寝ぼけた阿比留さんはどこ吹く風で私の身体中に手を這わせてくる。

いやらしい動きをしているわけじゃなくて、ただ撫でられてるだけなのに誘うような、獲物をじわじわと追いつめるような手つき。


それにドキドキするというよりも、阿比留さんがあまりに女の扱いに慣れていることに、だんだんムカムカしてきた。

遊んでるって阿比留さんは自分でも認めてたのに。


そんな阿比留さんを受け入れたくせに、いざ体感してみるとなんとも面白くない。

阿比留さんの手がジャージの裾からもぐりこんできて胸に触れた瞬間に、私は阿比留さんのお腹めがけてグーパンチを繰り出した。


「ぐっ」


阿比留さんは変な声を上げた後、「は……?」とようやくハッキリと意識を取り戻したようだった。


「アレ……? 比奈子ちゃん……?」

「……おはようございます」


ぶすっと低い声で挨拶を交わした。

憧れのシチュエーションとはほど遠い。


それにしても私だって認識してないくせにあんなことするなんてー。

デビルさんの遊び人め。
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