甘え下手
阿比留さんは元から無口だから言葉を発しないとしても、この空間で誰もしゃべらないとは……。

気まずさMAX。


こんな空気感じてるの私だけなの? と泣きそうな気持ちでキョロキョロしていると、阿比留さんが「紅茶嫌いだっけ?」と見当違いな気遣いをしてくる。


「あ……、ごめんなさい。確認もしなくて」

「いえ、違います! 大好きですっ」


申し訳なさそうに謝る優子さんを見て、慌ててティーカップを口につけて紅茶をひと口ゴクリと飲んだ。

喉を熱い液体が通っていく。


ああ、落ち着かない。


「優子さん、お皿並べてちょうだい」

「はい」


その時ようやくお母様が声を発して、優子さんは私達の傍を離れて行った。


やっぱり私も手伝った方がいいんじゃないかな。

お皿並べるくらいだったら私にもできるし……。


そう思ってそわそわしだした私の手首を、突然阿比留さんがつかんだ。


「比奈子」

「えっ?」

「放っておいていいから」
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