甘え下手
「阿比留さん大人っぽい……」

「そうか?」

「私なんてこの頃は日に焼けて真っ黒だし、メイクもしてなかったしで、中学生によく間違われてました……」

「ハハッ。今と変わんねーじゃん」

「ひどっ! 今はちゃんとメイクしてます……っ」

「どれどれ?」


阿比留さんがからかいながら私の目の前へしゃがむと、私の両頬を包んで自分の方へ向けさせる。

私はぷくっと頬を膨らませながら、阿比留さんを軽く睨んだ。


あ、これさっきの体勢だ……。


そう思ったのと同時に阿比留さんがイタズラっぽく口端を上げて言った。


「さっきの続き、する?」

「……」


さっきのキスの続き。

したい、けどさっきみたいに誰か来たら。


チラリとドアに視線を向けると、阿比留さんがふっと苦笑する。


「じゃ、やめとく?」
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