甘え下手
「……うん」

「もー。そういう覇気のないお姉ちゃんを相手にするのは萎える」


私が仕方なく返事をすると、沙綾は不満そうに唇を尖らせた。

私が相手じゃ不足らしい。


「……はぁ」

「だからお姉ちゃんも気合見せてよ！」

「気合……。どうやって？」

「私の彼を取らないで！　とか言えば？　それとも阿比留さんとは流れで付き合ってるだけ？」

「な、流れじゃないよ……！　周りから見れば流されたように見えるかもしれないけど私は阿比留さんを……！」


興奮してそこまでしゃべってふと我に返って言葉に詰まってしまう。

妹にこんなことを言うのは恥ずかしい、すごく。


私らしくないところが見られたからか、沙綾はふふんと不敵な笑みを浮かべると、それ以上は追及してこずに私の前を通り過ぎて自分の部屋へと行ってしまった。


不気味だ。すっごく。


私は慌てて自分の部屋に飛び込むとドアを閉めて、深呼吸をして息を整えた。

一番手ごわいと思っていた相手に宣戦布告されてしまったのかもしれないと気づいて頭を抱えたくなった。
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