甘え下手
沙綾の戦法は実に分かりやすかった。

姑息な手段を使わないだけ有難いのか、それともそこにつけこまれているのか、実に堂々とデートの邪魔をしてくる。


「……なんで今日も沙綾が一緒なんだよ」

「えへへー。私もこの映画見たかったんだもんっ」

「だからって姉貴のデートについてこようとか思うか?」

「私は阿比留さんかお姉ちゃんと二人でもよかったんだけど? 私がお姉ちゃんと二人で見ちゃったら、阿比留さん寂しいでしょ?」

「なんで俺が仲間外れになってんだよ」


私が断りきれなければ、阿比留さんは文句を言いつつも沙綾の相手をしてくれる。

自分がそういう選択をしたくせに、二人の会話が弾んでいると疎外感を覚えたりして。


可愛くない私。

ああ、負のスパイラル。


今も阿比留さんと私の間にはしっかりと沙綾が歩いてる。

べつに手を繋ぎたいとか望んでいたわけじゃないけれど、それでもこの空きすぎた距離に寂しさを感じてしまう。


付き合ってなかった時には知らなかった感覚。


阿比留さんこっち向いてよー。
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