甘え下手
阿比留さんが沙綾に気があるなんて疑ってない。

二股かけられるとも思ってない。


だけど阿比留さんが沙綾を抱きしめたことは事実で。


どうしよう、上手く笑えない。

さーちゃんが恋愛に絡むと。


過去に好きだった人が妹を見る目を思い出して、一気に心が凍りついてしまった。

それは他人には理解してもらえないであろう私だけの劣等感。


「抱き寄せて電話の相手に『女といる』って言って切ってくれたじゃん」


聞こえるのは沙綾の声だけで、阿比留さんからの言い訳だとかは一切なかった。

それが私をまた悲しい気持ちにさせた。


「それってお姉ちゃんと付き合う前だから? 今は私じゃダメってこと?」

「さーちゃん、もうやめて」

「お姉ちゃん、こんなことくらいでへこんでんの? 悪いけど阿比留さんってそういう人だと思うよ?」


違うよ、さーちゃん。

さーちゃんが相手だから。
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