甘え下手
それにしても櫻井室長が来てたなんて……!

参田さんと焼き肉なんか食べてないでさっさと帰ってくればよかった!


「はっ、そうだ。お兄ちゃん、さーちゃんは!?」

「は? 帰ってるけど?」

「へ? 帰ってる? 部屋に電気点いてないじゃん」

「ああ、俺らとリビングで飲んでたから」

「……そ、そっか」

「どうかしたか?」

「……なんでもない」


なんでもない、なんでもないけど……。

沙綾は櫻井室長と一緒に飲んでたんだ。


いやいやっ、変な男の毒牙にさーちゃんが引っかからなくて、よかったじゃないか!


勝手に落ち込む気持ちを、私は自分で奮い立たせた。


「ん? 比奈子ちゃん、元気ない? どうかした?」

「え? なんでもないですよー」

「展示会、目標達成したんだってね、頑張ったね」


ホラね、櫻井室長は優しい。

参田さんには絶対にされたくない頭ポンポンだって、櫻井室長にされたら、泣きたいくらいに嬉しくなる。
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