甘え下手
阿比留さんもそうだったらいいのに。

一緒にいたら幸せすぎて、うとうと眠っちゃうくらいならいいのに。


そしたらきっと怖い夢も見ないと思う。


「そうだなー。比奈子ちゃんがいてくれたら、ないよ」


阿比留さんはふざけて、私の胸に顔を埋めてギューって抱きしめてきた。

阿比留さんの髪が顔にかかってくすぐったい。


意外にふわふわしてるなーなんて思いながら、頭をなでなでしてあげた。

もしかしたら阿比留さんも頭を撫でてもらうことが少ない幼少時代を過ごしたのかもしれないと思って。


私がいっぱい抱きしめてあげたい。


「俺さー」

「はい?」

「ちゃんと比奈子のこと、大事にできてる?」

「え?」

「比奈子は寂しい思い、してない?」


顔が見えないから阿比留さんがどんな表情をしているのか見えない。
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