甘え下手
俺の言いたいことが分かったのか、比奈子は一瞬傷ついた表情をした。

そして何とも言えないような複雑な表情を。


「何? もう吹っ切れたから平気とでも言いたいの?」

「……」


彼女に自分を重ねる度、こうして傷つけてしまう。

守ってあげたいと思ってるのも確かなのに。


「……ごめん、比奈子」


最初は単なる嫉妬だったはずだ。

彼女の腕を引いて自分の胸に抱き寄せる。


抵抗されずに大人しく腕に収まる彼女に内心ホッとする。


『大切』の仕方が分からない。


「ちょっと妬いただけ。今日一緒だと思わなかったから」

「……え?」


俺の言葉に目を真ん丸にする彼女。


「なんか変なこと言ったか?」

「阿比留さんが私にヤキモチ……?」

「妬くだろ。普通に。俺のことなんだと思ってるんだよ」
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