甘え下手
こないだ妬いたっつってんだから気づけよ。

比奈子の小さな鼻の先をキュッとつまむと「ふっ」と変な声を出した。


なんの小動物だ。


そのまま顔を近づけて彼女の唇を奪う。

突然のキスに驚いて身を引こうとする彼女の背中に腕を回して、さらに深く口づけた。


そのまま体重をかけて押し倒そうとしたところで、比奈子が頭を振って唇を外すと、「ちょ、ちょっと……!」と本気の抵抗を見せてきた。


「何?」

「何って……。下にはお兄ちゃん達が」

「だって真っ先に部屋通したの比奈子じゃん。こういうの期待してたんじゃないの? 比奈子ちゃん」

「ちが、違います」


本気で言ってるわけじゃないのに、目が泳ぐ彼女がおかしい。

けれど櫻井室長がいるリビングに俺を連れて帰りたくはなかったって気持ちが彼女にあったことだけは事実。


それが面白くなくて、俺は戸惑う彼女をそのままゆっくりとラグマットの上に押し倒した。


「俺と付き合ってるの内緒なんだ?」
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