甘え下手
「違います! そんなこと言ったら阿比留さんだって……」


珍しく比奈子がムッとした様子で反論してきた。

「そんなこと言うならあなただって」は女が使う常套句だ。


問題をすり替えてこっちを責めてくる。

女ってそういう生き物だ。


まあ、比奈子はそういうタイプじゃないが、さすがに俺がしつこすぎたか。

他の女がそんなこと言い出したらウンザリするところだが、比奈子が言うのは珍しいから聞いてやろうって気になった。


「俺が、何?」

「阿比留さんだって優子さんのハンバーグ食べたじゃん……」

「は?」


言いたくなさそうに横を向いてボソッと口にしたのは、思いもよらぬセリフで、一瞬何の事だか訳が分からなくなった。


「ハンバーグ? なんで?」

「……私に作れるかって聞いてくれたのに、私が作る前に優子さんが作ったハンバーグ食べに行ったんですよね?」


悲しそうな表情。

責められてるのを感じる。


だけど前に実家に行った時にハンバーグが出てきたのは事実だから、それを何故比奈子が知っているのかが分からなくて、混乱する。
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