甘え下手
「私のこと常に子ども扱いして、先回りして自分だけがいい子になるの、やめてくれる?」

「……」

「どうせまた酷いこと言われても、笑って流してきたんでしょ」

「……酷いことなんて」


あれ、言われたのか?


「私だってもう大人なんだから自分で責任取ろうって、だから嫌だけど謝ろうって思ってたのに!」

「えっと、阿比留さんべつに怒ってなかった……」

「それで阿比留さんとお姉ちゃんが仲良くなっちゃうなんて、なんかホント最悪な気分なんだけど」

「……うん」


反論したいことは色々あった。

でも私は沙綾のそういう気持ちを知らなかったから、驚きの気持ちの方が強くて黙って聞いていた。


そうか、沙綾は自分で責任を取りたかったのか。


だけど沙綾の目には、酔っぱらってボーッとしているように見えたらしく、「もう寝る、オヤスミ」と捨てゼリフを残してリビングを出て行ってしまった。

ドスドスと二階へ上がる荒い足音が響いてくる。
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