甘え下手
「なーんか、私、何やってんだろ……」


目を閉じてペットボトルを目の上に乗せると、冷たい水がじんじんしていたまぶたの奥の火照りを冷やしてくれるようだった。


「阿比留さんのことも、沙綾のことも怒らせちゃった……」

「お前は究極ののんびり亀だからな」

「私って無神経なのかなあ」

「沙綾の気が強いだけだろ。甘えたり怒ったり、起伏が激しすぎんだよ」


阿比留さんは感情の起伏が激しいとは、思わないけどな。

私は単に阿比留さんの怒りスイッチを押す天才なのかもしれない。


沙綾が自分で謝りたいって思ってるなら、やっぱり今度は三人で食事でも……。

さーちゃん嫌がるかもしれないけど、でも二人っきりってのもやっぱり心配……。


ああ、それより前にまず私は櫻井室長とのお食事会を頑張らないと……。


「オイ、比奈子。寝るな。風呂は」

「……アレ、お兄ちゃん、まだいたの」

「てめぇ」
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