腐女子な漫画家に溺愛されチュウ!?
とりあえず今日は解散して、ほたるは一次まだ場所も決まっていないレストランを建てる許可を親からもらい。
俺は、おふくろの思い出深い場所を聞き出す事になった。
今、目の前にはおふくろが居て台所で今日の晩飯を作っている。
俺は、その背中をぼんやりと見る。
いつ聞こうか、どう聞こうか。
そんな事で頭がいっぱいだった。
でも、おふくろの背中をこうやって見るのはいつぶりだろうか。
おふくろの背中なんて、意識した事なんかない。
兄貴にイジめられて泣きながら飛びついた時以来か??
そんな事を考えていると。
「…で、善ちゃん、どうしたの」
いつもと声の調子は変わらない。
のに、何故かドキリと心臓が駆け足になった。
多分いきなり本題にいかれる所だっただからだ。
もう、言おう。
「あの…サ、えと…その、思い出の深い…場所…って、あるか??」
なんでしっかり言えねぇンだよ!!!
これぐらいの事!!!
あぁぁ、ちゃんと伝わったのか??
おふくろは、こっちを振り返るワケでもなく、ただ静かに笑った。
「そうねぇ…とんぼ公園、かな」
とんぼ公園…??
っていやぁ、俺が小さい頃よくおふくろに連れられて行った公園じゃねぇか。
俺が考え、何も言わないでいると。
「あのねぇ、あそこは善ちゃんが小さい頃、初めて自転車に乗った場所なのよ」
おふくろが振り向かずとも、嬉しそうに笑っているのが想像できた。
おふくろは、俺が記憶に無いような小さい頃の話をしだした。
…やっぱそうきたか。
おふくろの事だ、これが親父との思い出の場所を隠すための話ではないだろう。
本当に、俺達、兄弟を大切に想っているんだよな。
いや、本当に嬉しいんだけど…!!
「親父との…は??」
俺が、恐る恐る聞くと。
今まで川が流れるようにして無駄の無い料理を作る動きが、一瞬止まった。
「そう…ねぇ…」
おふくろは手にしていた包丁を起き、初めてこっちを振り返った。
そう言うおふくろの瞳は昔を懐かしむような…なんていうか、少し口が緩んでいて。
目は細くなっていた。
どこか、嬉しそうというか幸せそうというか。
「善ちゃん…とんぼ公園、あったでしょ??」
懐かしんでいたおふくろの瞳が、俺に向けられた。
俺は何故か『うん』という言葉が出てこなくて、ただ頷くだけだった。
「あのね、とんぼ公園の少し奥に…小さい丘が、あったの」
…そういえばあったような。
とんぼ公園は広かったからなぁ…。
「そこに、小さいレストランがあったの。おじいさんとおばあさんが、二人仲良く経営していた…」
していた、という事は過去形だろう。
おふくろと親父が若い頃からジジババならもう、ないんだろう。
「これといって綺麗、とか夜景が素敵、って事もなかったんだけどね…私たちの始まりは、そこだったのよ」