ルピナス





「…で、あのね、
僕が言いかけた事なんだけどね。」


今度は返事をしなかったが、代わりに弓月は花を撫でていた手を止め、キャンバスの向こうにいる真澄の方に向き直る。


真澄はキャンバスから整った顔をヒョコっと現せ、目を細めて弓月を見つめる。


最初はそんな些細な変化にも弓月は意識し、多少は動揺したものの、
今では全く意に介さない様になってしまった。


そもそも動揺した理由は、異性を目の前に、変に意識したわけではなく、
ただ弓月は人見知りをしていただけだった。

今ではすっかり顔見知りとなったわけだから、トキメキも何も動揺もしなくなったのだ。



「お願いがあるんだよね。」

真澄はニッコリと笑顔を作り、申し出た。


あまりに自然に言い出した物だから、弓月は咄嗟に「はい。」と応えたが、すぐさま「はい?」と聞き返した。


「僕から弓月にね、微小なお願いがあるの。」

不自然に「微小」という単語を使った真澄を目にし、弓月はそっぽを向きたくなる。




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