撮りとめた愛の色
履きなれたスニーカーをとんとんと地面につけながら踵まで足を包む。からからと戸を引けばさっきよりも色濃くなった夕陽が眼前を照らし、眩しさに一瞬目が眩んだ。
ざっと吹き荒れた風が木の葉を舞い上げていく様を見上げ、歩き出す。
「桔梗」
後ろからかけられた声に振り返れば、腕を組んだ彼が戸に背をつけるようにして立っていた。
「せんせ」
「帰るのかい?」
戸から背を離しゆっくりと歩み寄る彼を見上げる。茜色の光が色白な彼の肌を照らして艶《なまめ》かしく見せていた。
「声をかけてはみたのだけれど、集中していたようだから」
「嗚呼、そうか悪いね」
微笑んでいた彼が私を見てふと表情を崩すと、小さく吹き出した。間近で見た珍しいその表情に目を奪われていると彼との距離が近付いている。
心なしか、顔すらも近い。
「え、あのっ……せんせ?」
「じっとしていなさい」
吐息すらも感じてしまえそうな距離で彼は優しく囁きを落とす。鼓膜を震わす声は媚薬のように脳の動きすらも麻痺させる。
頬を掠めるように髪へと差し込まれた指先の冷たさに驚いて体をびくりと震わせれば、ぞわりと体が粟《あわ》立った。