撮りとめた愛の色
「前の反響が良かったようで、少し私生活について取材をしてみたいそうだ」
「……凄いことね、それ」
「有難いとは思うけど、普段の私の生活なんて筆を遊ばせ寝転んで茶を飲むくらい。ほら、面白味はないだろう?」
彼はひとつひとつ指折り数えては悪戯っぽく微笑む。普通とは違うはずなのにそう言われてみれば、何でもないことのように思えてしまうから不思議だ。
「───嗚呼、いや違うか」
彼は一旦、言葉を切って。
「他に何かあった?」
「桔梗がいる。面白味がない、と言うのは撤回しようか」
前触れもなく告げられた一言に口に含んだ麦茶を吹き出しそうになった。
撤回なんてしなくともいいのに、当たり前のようにそこに私を入れてくれるらしい。
気管に入ったせいで咳を何度もするハメになった原因の彼に急に何を言い出すのだと恨めしさが沸く。タイミングが悪過ぎじゃないだろうか。
「桔梗?」
「っ……気に、しなくていいから」
不思議そうに声を上げた彼をなんとか紡いだ言葉で言いくるめ、咳をひとつした私は深く息を吐き出した。