撮りとめた愛の色
「おや、来たか」
呟きながら顔を上げた彼はいつも通り立ち上がると出迎えるためか、声の元へと歩いていく。
遠ざかる気配に緊張が和らぐと、いつもよりずっと早い鼓動を感じながらはぁっと安堵するように長く息を吐き出した。
あんな近さ、心臓に悪い。
「嗚呼、もう」
今更になって熱が上る。
それを誤魔化すように食器を持って立ち上がれば、彼にだけは見られまいと近付く話声に急いで台所へと駆け込んだ。