週末シンデレラ


「わかりました、帰ります……タオル、ありがとうございました」

ウイッグを受け取り、自分が持っていたタオルを返した。

足元に置いていたバッグを取って、玄関へ向かう。

濡れていたはずのパンプスは表面が拭き取られ、中には新聞紙が詰められていた。

いつの間にか、係長が処置してくれていたようだ。“カオリ”へ向けられた優しさだというのに胸が震える。

係長のこと、諦められるのかな……。

パンプスから新聞紙を抜き取り、部屋から出て行こうとドアを開ける。

まだ雨は激しく降っていた。もう一度濡れる覚悟を決めて、外へ出ようとすると。

「これを」

係長が紺色の傘を一本、差し出してくれた。

「でも……」
「風邪を引いたら、困るから」


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