シガレットとキス
シガレットとキス

「綾ちゃん、飲んでる?」
「あ、はい!」

 飛び跳ねるように背筋を伸ばしながら、頼んだばかりのカシスオレンジを飲む。

 今、私は……彼氏には悪いなって思いながら、職場の先輩に誘われた飲み会に参加してる。

 何も期待してなかったけど、セックスレスになってしまった彼氏との関係に疲れていたのは事実だ。

「この合コンつまんない?」

 最初から隣に座って一言も発していなかった男性が不意に私にそう声をかけてきた。
 驚いて顔を見ると、彫刻みたいに整った顔をした男性が私をまじまじと見つめていた。

「そんな事ないですよ」

 罪悪感で帰りたくなってるなんて言えないから、適当にそう答えた。

「……あんたさ、彼氏いるんだろ?」
「え……」

 私の心を透かして読んでるみたいな目線に、思わず胸がドキドキしてきて戸惑う。
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