【番外編】惑溺 SS集
「由佳」
「なぁに?」
まだ少し寝ぼけたままでリョウの事を見上げると、長い指が、私の左手の平をそっとなぞった。
そして、まるでおとぎ話の王子様みたいな優雅な動きで私の手を持ち上げると、その甲に優しくキスをした。
「……リョウ?」
いつも意地悪なリョウらしくない行動に思わず心臓が跳ねる。
リョウは手の甲にキスをしたまま、私の事を上目ずかいでみつめ、ふっと微笑む。
その綺麗な微笑みに、心臓が大きく震えた。
触れた掌からこの鼓動が伝わってしまいそうで、恥ずかしさに思わず手を引こうとすると、それを拒むように力強く手を握られた。
そして、無言のまま私の薬指に何かを通した。