【番外編】惑溺 SS集
「ちょっと、リョウ!
沙織達が来たから離して!」
小声でそう言いながら彼の腕の中でもがくと、リョウは私の両手を壁に押さえつけ、私の焦る様子を面白がるような表情で見下ろした。
「いやだね」
いやだって。
もうすぐそこに沙織と矢野くんがいるのに……!
『灯り消えてるだけで、まだ中にいるかもしれないじゃないすか!』
扉のすぐ向こう側で、矢野くんの声が響く。
肩越しに見える木の扉を気にしながら、掴まれた腕を必死に振り払おうとする私を見て、リョウが意地悪に目を細めた。
「リョウ!お願い……」
カウンターの中で壁に押し付けられて。
乱された服、大きく開いた胸元、つけられたばかりのキスマーク。
こんな所見られたら、言い訳のしようもない。
お願いだから、離して……!
私が叫びのような懇願の声を上げると
「ちょっと、黙れよ」
口を塞ぐように、歪めた唇を強引に重ねられた。
リョウの背後で、ガチャリ扉の取っ手に手を掛ける音がした。