【番外編】惑溺 SS集
『おーい!松田さーん!いないのー?
お金払い忘れたからちゃんと払いにきたよー』
矢野くんが扉の外で、中の様子を窺うように耳をすませてる。
そんな気配が伝わってきた。
子供の頃、悪い事をして押し入れに隠れた時みたいに後ろめたくて、でも少しドキドキする感覚。
「なんだか、かくれんぼしてるみたい」
店の中の様子を外にいる矢野くんたちに悟られないように、息をひそめて小声でそう言うと、
「楽しそうだな」
リョウは私の耳元でくすりと笑った。
そしてその唇がそのまま、私の耳朶に噛みついた。
「んん……っ!」
リョウの歯が柔らかい耳朶を甘噛みしたかと思うと、今度は暖かい舌が耳のふちをゆっくりとなぞる。
「ちょっと……!リョウ……」
「静かにしないと、声、聞こえるけど?」
「……やっ、ん……!」
意地悪。
本当に意地悪。
私がそうやって、耳を攻められるの弱いって知ってて。
この状況でこんな事するなんて。