宝物〜絆〜
 私がいきなり叫んだからみんな驚いていたが、私はそんな事お構いなしにとっとと帰りの準備を進める。

 ただ、今から話をする香奈や、いつでも話せる秀人とは違って、永田さんは次の日曜まで会わないから、このまま帰るのは気まずいというか、気が引ける。

 私は一旦、手を休めて永田さんの方を見た。

「突然叫んで、驚かせちゃってすみません」

 軽く頭を掻きながら、ごまかし笑いを浮かべる。

「あら、そんな事は気にしなくて良いのよ。おばちゃん、分かってるんだからね。やっぱ若いって良いわねえ」

 口元に手を当てて含み笑いする永田さん。含み笑いってよりニヤけてるっつった方が正解か。

 あまりに意味深な言い回しをするから、何を分かってるのか知りたかったが、今、聞くのはやめておく事にした。

「ハハ。永田さんも、まだまだ若いですよ」

「美咲ちゃんったら、持ち上げるのがお上手ねえ。じゃ、おばちゃんはそろそろ、お暇(おいとま)するわね。みんな、また来週よろしくね」

 いち早く帰り支度を整えた永田さんは、荷物をまとめて休憩室を去る。

 続いて秀人が荷物を手にして、ロッカーを閉めた。

「じゃあな。二人とも、お疲れさん」

 やはり私の思い違いなんかじゃなく、明らかに不機嫌な秀人。

 とりあえず帰ったら電話するか部屋に行って話を聞いてみよう。
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