BirthControl―女達の戦い―
「それならいいんだ……

悪かったな?
じゃあまた来月も報告を頼む」


「はっ!承知いたしました

それでは失礼します」


電話を切ると、譲はドサッと黒い革張りの椅子に体を預けた。


毎月のこととはいえ、淡々と任務をこなしてるように見えて、実は思ったよりもあの指示を出すのは辛い。


だがこうでもしなければ、ようやく軌道に乗ってきた少子高齢化対策に水を指すことになる。


譲は自分は間違っていないということを、青柳からの電話の後は、必ず自分に言い聞かせていた。


『少子化対策支援法』の追加法案が可決されたのは、つい2年前……


譲はその法案を妻の和子と一緒に、何年も前から推進してきた。


世論の反対勢力にも負けずに、必死に子供が出来ない夫婦を長く続けることは無意味だと訴え続けた。


そんな中、起きた娘の誘拐事件――


起こるべくして起こったといっても過言ではない。


いつかこんなことが起こるんじゃないかと、譲は思っていたのだ。


和子は動揺したけれど、譲はチャンスだと思った。


これを機に反対勢力を潰せるかもしれないと……


だが事態はそううまくはいかなかった。


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