BirthControl―女達の戦い―
そう返事をすると、久枝は何を言うでもなく、にっこりと百合子に微笑みながら、庭の花達を愛でている。


“がんばんなさい”とか“大丈夫?”とか、そんな言葉は一切言わないけれど、逆に何も聞かずに心配してくれる久枝が、百合子は大好きだった。


ふと久枝が優しく見守る花達に目を移すと、紫陽花がすっかり茶色く変色し、代わりにひまわりが色づき始めていた。


もうすぐ夏がやってくる。


だんだんと昇ってくる太陽が陽射しをどんどん強くして、百合子達に振り注いできた。


「そろそろ部屋にもどりましょうか?」


百合子は久枝にそう声をかけて肩に手をかけると、冷たい無機質なコンクリートの中に二人並んでゆっくりと入っていった。


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