BirthControl―女達の戦い―
遥香の話では、ここの住人やスタッフには一切知らされてはいなかったが、今現在この施設には二つの棟があり、80歳になると別の棟に移されているらしいということだった。


しかも今回、遥香の仲間が調べたところによると、その年齢が75歳に引き下げられるかもしれないというのだ。


確かに久枝がこの施設に入居してから、知らないうちにいなくなる高齢者がいることには気付いていた。


けれど余計なことは詮索しない方がいいのだという防衛本能が働いていたのか、久枝はそれを誰かに尋ねることはしなかったのだ。


たぶんここにいるみんながそうなんじゃないかと思う。


誰もがこの施設に入れられた時点で諦めているのだ。


もっと言えば、ここに入れられたが最後、あとは死ぬのを待つだけだと思っているんだと思う。


だから80歳になって移動があろうが、殺されようが、もうすでに覚悟がなされているのかもしれない。


久枝も例外ではなかった。


もういつ死んでもいいという準備はしてきたつもりだ。


けれどどうせ死ぬのなら、遥香のために、この国を変えるために命を捧げられれば、こんなに嬉しいことはない。


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