BirthControl―女達の戦い―
あれから遥香は何事もなかったように高志に接してきていた。
そうはいっても必要以上には近付きはしないが……
(あれは夢だったんだろうか?)
いや、でもそんなはずはない。
確かに遥香のナース服を脱がし、乳房をこの手に納めた記憶がある。
それさえも夢だったのかと、あの時目が覚めて思ったけれど、部屋に残る女の匂いと、腹についた火傷のような後が、夢ではなかったことを物語っていた。
やはり遥香は麻生が心配した通り、何かこの施設について探っているのかもしれない。
あれから三ヶ月――
再三の要求に政府はようやく重い腰を上げて、早々に年齢引き下げの法案は可決し、今月から75歳以上の者もB棟に移送することが決定した。
そしてちょうど今月76歳になる久枝が一番手となったのだ。
それを即座に通達すると、久枝は意外にも落ち着いた様子だった。
以前から懇意にしている久枝が移送されると聞いて、遥香が何も言ってこないことも不気味だった。
(……何を考えてやがる!)