BirthControl―女達の戦い―
「先生、ほんとにありがとう……

まさか来てくれるなんて思ってなかったから、無線で聞いたときはほんとに嬉しかった」


今日は入浴予定のない曜日のため、この大浴場に人は来ないだろう。


青柳が死んだ今、B棟について知っているものは自分しかいない。


追われることのない安心感から、遥香は丸山に感謝の言葉を述べた。


「はるちゃんが無茶するんじゃないかって、あの二人に頼み込まれたんだよ

私も心配だったしね?」


さっきの梨央といい今の丸山といい、両親を捨てた遥香にとって心配してくれる人がいてくれるのはすごく有難かった。


「ごめんね、先生……

でもありがとう」


にっこり笑ってそう伝えると、丸山もまた目尻に皺を寄せて笑う。


遥香は丸山のこの笑顔が大好きだった。


後は要が戻り、久枝が命をとりとめれば、この施設にもう用はない。


梨央がうまくやってくれていれば今頃世間は大騒ぎだろう。


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