BirthControl―女達の戦い―
店の前に立っていたのは、常連客の宮田だった。


礼子は密かに彼を気に入っていただけに、夜ではないプライベートな時間に訪ねてくれたことを嬉しく思う。


おじさんばかりの客の中で、宮田は唯一若くて、見た目も悪くない客だった。


何より子犬のような目で礼子を見つめる彼に、母性本能をくすぐられていた。


「あら?宮田さんじゃないですか

どうしたんです?
こんなに早い時間から

もしかして忘れ物?」


自分に会いに来たことは一目瞭然だったけれど、わざと知らないふりをして彼に近づきながらそう聞いてみた。


目の前に現れた礼子に宮田は驚いたような顔をして、体を上から下まで舐めるように見つめてくる。


宮田の喉がゴクリと生唾を呑むのがわかった。


たぶん夜とは違う礼子の姿に戸惑ってるといったところだろう。


固まっている彼の意識をこちらに戻そうと、礼子はもう一度声をかけた。


「宮田さん?

何か……あったんですか?」


そう言い終わるか終わらないかくらいのタイミングで、彼は礼子に抱きついてきた。


一瞬、戸惑いはあったものの泣いているのに気付いて、ゆっくり優しく背中を擦って宮田が落ち着くのを待った。


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