BirthControl―女達の戦い―
あの時――


裕之が若い娘と体の関係を持ったことを知ったとき……


しのぶはちょうど夏休みだということもあり、子供たちを連れて実家に帰っていた。


母とお手伝いの貴和子は、そんなしのぶと子供たちを何も聞かずに歓迎してくれていたけれど、父はそうでもなかった。


ちょうど実家に帰ると伝えていた日もすでに出掛けた後だったし、それ以外も忙しいのか中々家で顔を合わせることはなかった。


今思えば、夫の浮気ぐらいで実家に帰ってくるような娘を情けなく感じていたのかもしれない。


夏休みが終わり、学校が始まる頃になっても、しのぶは裕之の元へ帰る決心がつかないでいた。


しばらく学校まで車で送り迎えすることにして、実家にもう少し置いてくれないかと頼んだのだ。


母はちょっぴり困った顔をしたけれど、あと一ヶ月だけよ?と承諾してくれた。


父には母からうまく言ってくれたらしい。


その事で何か父から言われることもなかった。


もしかしたら父はしのぶに興味がないのかもしれないと、安堵したと同時に卑屈な考えが頭をよぎったけれど……


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