BirthControl―女達の戦い―
そんなある日、父が一人の女性を家に連れて帰ってきた。


母や貴和子はすでに了承していたらしく、驚くことなく家に招き入れた。


しのぶはこの家の娘であるはずなのに、一人だけ茅の外のような気がして、居たたまれない気持ちになったのを覚えている。


父はしのぶに対する態度よりも明らかに優しくその娘に接していた。


まるでその娘の方が自分の娘であるかのように……


しのぶよりもずいぶん年下のその娘に、この時激しく嫉妬していたんだと思う。


その娘は百合子と名乗った。


父の話ではあのOldHomeで調理の仕事をしているらしい。


詳しくは話してくれなかったけれど、どうやら行くところがないらしく、この家に住まわせるということだった。


もちろん、自分も今はこの家の住人ではなく間借りしているだけなので、文句も言えない。


ただ、この家の空いていた部屋は、全てしのぶと三人の子供が占領していたため、百合子にあてがう部屋がなかった。


本当はしのぶが夏休みいっぱいでいなくなることを見越して連れてくるはずだったのかもしれない。


< 318 / 406 >

この作品をシェア

pagetop