BirthControl―女達の戦い―
異変に気付いたのは、会社について少し経った頃だった。


バタバタとみんなが走っているのを見て、騒がしいなぁくらいにしか最初は思っていなかった。


けれどしばらくするとオフィス内には誰もいなくなり、裕之一人になっていた。


さすがに何かあったんだろうかとロビーに出てみる。


大画面のテレビの周りに群がる社員たち……


女性の悲鳴や男性の怒鳴り声が聞こえる。


あまりの異様な光景に驚きながらも、裕之は人混みを掻き分けテレビ画面が見える位置に移動した。


「――ッ!」


そこに映る光景に裕之は息を呑んだ。


そして何よりも一番驚いたのは、そこにしのぶの父である哲朗が映っていたことだった。


(何が……あったんだ?

しのぶや子供たちは無事なんだろうか?)


ただ事ではない映像を見ながら、裕之は心配で堪らなくなる。


咄嗟に裕之はしのぶの実家に電話をかけていた。


長いコール音の後、ようやく電話に出たのは家政婦の貴和子だった。


一呼吸置いてから、裕之はゆっくりと話し始める。


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