BirthControl―女達の戦い―
電話の向こう側で、呆れたような溜め息が漏れ聞こえた。


情けないのはわかっていた。


でも自分から行動を起こして拒否されることが怖かった。


貴和子はこれ以上言っても無理だと思ったのか、諦めたようにわかりました、と答えた。


それから、お嬢様の安否はきちんとお知らせしますから安心してくださいと言ってくれた。


電話を切ってから、裕之はその場に立ち尽くした。


貴和子がああいうのだから、とりあえずしのぶは大丈夫なんだろう。



それよりも心配だと言いながら何も出来ない自分に腹が立った。


「くそっ!!」


そう吐き捨てて拳を握りしめる。


みんなテレビに釘付けで、そんな裕之を気にするものなど誰もいなかった。


けれど今はそれが有り難い。


どうしたんだと聞かれたって答えられるはずもないのだから。


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