BirthControl―女達の戦い―
どちらにしてもいつの間にか自分の手から離れてしまった母に、自分はもう必要がないと思ったのかもしれない。


哀れに死んでいった父を一瞥しながら、礼子は今度は母を真っ直ぐに見つめた。


もう、涙は出てこない。


「これからどうするつもりなの?」


いつの間にか、礼子は母にそう聞いていた。


母や子供たちがどうなろうが知ったこっちゃないと思っていたはずなのに……


「何とか働き口を見つけて、貧しくても……頑張ってあの子達を育てるつもりよ……

お父さんの分までね?」


世間知らずな母が……


礼子を慰みものにしてまでも、自分で働こうとはしなかった母が……


あの子たちのために働く?


それは礼子への償いなんだろうか?


「無理に決まってるじゃない

働いたこともないくせに」


口をついて出たのは、そんな非難めいた言葉だった。


「そうかもしれないけど……

もう私は逃げないって決めたから……

礼子の子をちゃんと育てるためなら、何でもするわ」


(……私の子?

それが私への償いだってこと?

私は自分の子だなんて……一度も思ったことなんかないのに?)


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