BirthControl―女達の戦い―
「どこ……に……?」


実家のない百合子が行くあてなど見当もつかない。


洋一はそこで初めて百合子のことを何も知らなかったのだと気付いた。


何もない部屋の真ん中に、ぽつんと一人ぼっちで膝を抱える。


(何もなくなった……

俺には何もないんだ)


そう思ったらまた涙が溢れる。


こんなはずじゃなかった……


こんなはずじゃなかったのに……


自分のことしか考えなかった結果がこれだ。


自業自得……洋一はそう思いながら、自分の浅はかな行動を振り返る。


自分が悪いのはわかってる。


でも誰かにすがりたかった。


助けてほしかった。


ふと百合子がOldHomeで働いていたことを思い出した。


まだあそこで働いているだろうか?


OldHomeは廃止になったけれど、そのまま以前とは違う開放された施設になると聞いたような気がする。


もし、まだあの施設で働いているのなら、百合子に会えるかもしれない。


明日になったら、施設に行ってみよう。


洋一は微かな希望を胸に抱いて、このがらんどうな部屋の真ん中で、ようやくぐっすりと眠ることが出来た。


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