BirthControl―女達の戦い―
鍵は持っていない。


礼子のところに置いてきてしまった。


もう必要ないと思いながら捨てずにいたのは、もしかしたらこういう事態になることを、無意識にわかっていたのかもしれない。


狂ったようにチャイムを押しながら、洋一のそれはだんだんと怒りに変わっていく。


(――何でだよ!

何で開けてくれないんだ!

そこにいるんだろう?百合子!)


不安で涙がこみ上げる。


自分が泣いていることに気づいて、洋一はハッと我に返った。


自分がすがるようにチャイムを押していたことに呆然とする。


ようやくチャイムから指を離して、試しにドアノブを回してみた。


(……開いてる?)


クルッと回って難なく開いたドアを、洋一は恐る恐る開いた。


「……っ!!」


一瞬、目を疑った。



そこは何もない空間……


洋一はその空間を見つめながら、百合子が出ていったことを知った。


< 386 / 406 >

この作品をシェア

pagetop