BirthControl―女達の戦い―
次の日の朝――
昨日のことは忘れようと決心しながらも、礼子は重い足取りでリビングのドアを開けた。
「おはよう」
いつも通りそう声をかけてくる母の顔を、礼子はまともに見ることが出来ない。
母に相談したかったけれど、父との仲を考えるととても言えなかった。
「おはよ……」
小さくそれだけ答えると、母の顔を見ることなく、朝食の用意されたテーブルにつく。
父はまだ起きてはいなかった。
ホッと息をついたのも束の間、リビングのドアが開く音がして、父が普段通り入ってくる。
礼子はビクッと体を強張らせて、父の方を見ることが出来ずにいた。
「礼子、おはよう」
何事もなかったかのようにそう声をかけてくる父に、もしかしたら全部あの男の嘘だったのかもしれないと、礼子は小さな希望を見い出した。
「お…はよう……」
ひきつった顔をなんとか笑顔にしてそう言うと、父は満足そうに頷いて席につく。
「礼子、昨夜はどうだった?」
(……昨夜って?
何のことを……言ってるの?)
心臓の音がうるさいくらいにドクドクと聞こえてくる。