BirthControl―女達の戦い―
体は震え、息が出来ない。


(嫌!! やめて!!

お母さんの前で変なこと言わないで!!)


そう言いたいのに息が苦しくて何も言えない。


浅く呼吸することが精一杯で、父を阻止することが出来なかった。


「菊地さんに可愛がってもらったんだろう?」


「――ッ!」


やはりあの人の言ったことは本当だったんだと、礼子は体がさらに震えるのを感じた。


今、目の前にいるこの父親面した男は、実の娘を売ったのだ。


妻子あるあの中年男に、娘の初めてを奪わせた張本人。


「どう……して?」


絞り出すように、やっとのことでそう問いかける。


どんな言い訳をしたって許すつもりは一ミリもなかったけれど。


礼子の怒りなど知るよしもないんだろう父は、自分のしたことを正当化するような答えを平気な顔で言ってのけた。


「お前も知ってると思うが、うちは一人っ子だろう?

母さんは子宮の病気で、お前を生んだあと、もう妊娠できない体になってしまった

それでもお前がいたおかげで、家賃も光熱費も免除されて、月に20万の手当てがもらえていたわけだ」

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