BirthControl―女達の戦い―
「明日、しのぶが子供達を連れて来るらしいわ

夏休みだからしばらく泊めて欲しいって言ってたけど、いいわよね?」


敬子もうすうす娘に何かがあったんだろうと察してはいるんだろうが、それをいちいち哲朗に言うようなことはしない。


そういう余計なことは一切言わない賢いところが、哲朗が敬子を妻に選んだ理由でもあった。


「じゃあ明日は病院は休んで、しのぶ達を迎えてあげなさい」


哲朗がそう言うと、敬子は少しだけ驚いたような顔をしていたが、何かを思い出したのか納得したように言った。


「そうね?明日はあなた、施設に往診の日ですものね?

なら私がいなくても大丈夫だわ

ありがとう、あなた」


哲朗は自分が病院で診察するときには、よっぽどじゃない限り、敬子を傍に置いておくのが習慣だった。


看護師として信頼していたし、なにより何も言わなくても自分の言わんとしていることをわかってくれる看護師は他にはいない。


敬子もそれを知っているが故に、休んでいいと言われて驚いたのだ。


しかし施設に行く日は別だった。


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