BirthControl―女達の戦い―
しばらく歩いて行くと、いくつかの扉が現れてくる。


そのうちの一つに、哲朗は手慣れた様子で何回目かのIDカードをかざすと、中に入っていった。


ここは施設内にある診療所のようなもので、普段はここで働く看護師が、ある程度の処置をしている。


そのため、一ヶ月に一度だけ哲朗がここに訪れ、施設に住む全ての人間の健診を行っているのだ。


こんなに老人がいるというのに、一ヶ月に一度の健診ですむなんて、通常では考えられない。


かつてまだこの施設がなかった頃には、病院といえば老人がこぞって朝から並び、コミュニケーションの場にしているのが当たり前だったというのに……と哲朗は思う。


今では病気になどなろうものなら、施設に入れられてしまう恐怖からか、70歳に満たない老人も、めったに病院には足を運ばない。


来院するのは働き盛りの大人か、もしくは子供がほとんどだった。


子供は国の宝であり、窓口負担がないため、ちょっとのことでも病院に訪れる。


昔はなりてのなかった小児科医や産婦人科医も、今では6割を超える勢いで増えていた。


哲朗は内科医だったが、需要に応じて子供も見なければならず、後から勉強をして、今では小児科と内科の二つを掲げている。


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