BirthControl―女達の戦い―
「丸山先生、おはようございます!

今日はずいぶん早いんですね?」


にっこりと人懐っこい笑顔でそう言ったのは、この施設で働く看護師の麻生遥香だ。


この施設で働く女達は、だいたいが何か訳ありであることが多い。


彼女も例外ではなく、心に傷を抱えてここで働くようになった一人だった。


「あぁ、おはよう!

ちょっと今日は家に娘と孫が来ることになってたもんだから、うるさいのが来る前に出てきちゃったんだよ」


ハハハッと豪快に笑いながら、娘に何かあったんじゃないかという不安は隠して、哲朗は努めて明るく遥香にそう言った。


「そうなんですか?

でも賑やかでいいですねぇ?

うらやましいなぁ」


まだ28歳になったばかりの遥香だって、充分に賑やかな家庭を作ることが出来るのにと思いながら、遥香の傷を知る哲朗は敢えてそれを言うことはしなかった。


「今日は何人くらいかな?」


そう話題を変えて遥香に問いかけると、彼女はサッと看護師の顔になって答えてくれる。


「今日診ていただくのは、職員も合わせてだいたい1000人前後だと思います」


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