西澤さんと文子さん

文子は、自宅に帰るとすぐに携帯をチェックした。着信記録は無し。あらかじめお見合いの事を伝えていただけあって同僚達も気をつかった様だ。


「何だろう…完全に…何か変だ。」


今日の見合いの事を思い出すと、ヘコむ文子。初めての見合いで、西澤に見向きもされなかった…女として終わってるんだと文子は感じてしまっていた。

文子は、そんな気持ちを抱きながらバスルームへ行く。風呂場の鏡に映った自分の裸を見た時、西澤の顔を思い出す。


(やっぱり・・・女子力も必要なのかな…)


文子はそう思いながらシャワーの蛇口をひねった。


翌朝

文子は、いつもどおりに会社に出社。そつなく仕事をこなしていく。
しかし、ふとした瞬間に西澤の事を思い出す。

仕事が終わり、会社のエントランスをあとにしてすぐ、携帯が鳴りはじめる。


「文子。今大丈夫?」


母親からだった。
話はもちろん西澤との見合いの事。

「どう?西澤さん。少し年上だけど、文子にはお似合いの人だと思うな~。でも、文子の気持ち次第だと思うんだけど・・・」

「・・・西澤さんは、どういってるの?」

「う~ん・・・わからない。西澤さんの返事、返ってきてないんだって。」


「そうなんだ・・・」



それから少しいろいろ話をした後、文子は携帯の電源ボタンを押した。その瞬間、文子の身体の中を冷たく暗い空気が包んでいく・・・。


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