西澤さんと文子さん


「もう、悩まないでください。」


そういって、文子の頬に右手をそっと置いた。その瞬間、文子の目から大粒の涙が溢れだす。
西澤は、その涙を右手の親指でやさしくふき取ると「泣かない。」といってまた、抱きしめた。


「じゃ、もう遅いですから。」


そういうと、西澤は文子を持ち上げる。いわゆるお姫様抱っこ。驚いた文子を気にせず「寝ましょう。」といって寝室に向かう西澤。その時、文子がぼそっと小さな声でつぶやいた。


「本当に・・・信じて・・・」


その言葉に、寝室に半分足を踏み入れていた西澤はこう返した。


「信じてください。」


と・・・


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