Over Line~君と出会うために
「……たぶん、順平ちゃんが思っているようなことは、違うと思う。でも、俺は」
「でもな、貴樹。どっちにしたって、お前がREAL MODEの東城貴樹である以上、いずれは避けて通れないだろうが。先に事情を話しておけば、必要以上にこじれることもなくなる。ツアーに出なきゃならないのは、この先だって同じなんだぞ。全部話して、それでも別れるだの何だのという話になるんだったら、そんな女はやめとけ。お前にはふさわしくない」
「でもさ……順平ちゃん」
「何だ」
「今の順平ちゃんの話は、ひとつ、間違えてる」
「はあ?」
 何が間違いだ、と、天宮は貴樹を睨む。
「実を言うと……その、まだ、付き合ってもいないんだよね……」
「……お前は、中学生か何かか……? ツアーに行きたくないだの何だのって騒ぐ前に、やるべきことがあるだろう!」
 とっとと告白して来い、悩むのはそれから出充分だ! と、天宮は貴樹の背中に容赦のない蹴りを入れた。
「……言われなくてもわかってます……」
 そして、貴樹の『恋の話』は。
 当然のことながら、その日のうちに天宮によってメンバー全員に面白おかしく語られることとなった。やはり、話す相手を間違っていたとしか思えない貴樹の行動であった。
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