Over Line~君と出会うために
それからしばらくの間、貴樹はめまぐるしいスケジュールをこなすのに必死で、落ち着いてメールを書く暇もなかった。ツアーのリハーサルは佳境を迎えていたし、その合間を縫っての雑誌のインタビューや撮影、ラジオやテレビの出演やコメント収録、ファンクラブの会報に載せるメッセージの執筆。いろいろありすぎて、もう、何が何だかわからない。マネージャーに言われるがまま、貴樹は黙々と機械的にそれをこなして行くだけだ。
たまに、ぽっかりと時間が空く。それは、数時間とか、その程度のものだ。数日に一度、それくらいの間隔で生じるその空白の時間は、普通に社会生活を送っているのだろう彩に連絡するには、とても、常識とは言えない時間帯だった。
そんな時間に連絡を取っても許されるのか、そこまでの自信はなかった。
仕方ないから、簡単にメールだけ送っておく。
会えないからこそ、以前よりも頻繁に交わすようになったメールは、少し悲しかった。却って彼女に会いたい気持ちが募ってしまって、それは、気持ちを解決するには遠い場所にあるものにしかならなかった。
話をしたい。そう思う。今はただ、それだけだ。それ以上のことを望むのは、まだ早いと思っていた。いや、望めるほどに彼女との距離は近くない。
彩の声を聞いて、他愛のない話をして、そして、自分は彼女と変わらないのだと感じたかった。だけど、そんな小さな願いさえも叶わない日々は続く。
そうして、苛々は募る。これでも、結構ポジティブに生きている方だと思っていたのに、そんなの、全然違っていたとしか思えない。仕事に集中しなければならないのはわかっていて、仕事が始まればちゃんとそのことだけを考えられる。なのに。
ふとした瞬間に、思い出す。そして、溜め息をつく。その、繰り返しだった。
たまに、ぽっかりと時間が空く。それは、数時間とか、その程度のものだ。数日に一度、それくらいの間隔で生じるその空白の時間は、普通に社会生活を送っているのだろう彩に連絡するには、とても、常識とは言えない時間帯だった。
そんな時間に連絡を取っても許されるのか、そこまでの自信はなかった。
仕方ないから、簡単にメールだけ送っておく。
会えないからこそ、以前よりも頻繁に交わすようになったメールは、少し悲しかった。却って彼女に会いたい気持ちが募ってしまって、それは、気持ちを解決するには遠い場所にあるものにしかならなかった。
話をしたい。そう思う。今はただ、それだけだ。それ以上のことを望むのは、まだ早いと思っていた。いや、望めるほどに彼女との距離は近くない。
彩の声を聞いて、他愛のない話をして、そして、自分は彼女と変わらないのだと感じたかった。だけど、そんな小さな願いさえも叶わない日々は続く。
そうして、苛々は募る。これでも、結構ポジティブに生きている方だと思っていたのに、そんなの、全然違っていたとしか思えない。仕事に集中しなければならないのはわかっていて、仕事が始まればちゃんとそのことだけを考えられる。なのに。
ふとした瞬間に、思い出す。そして、溜め息をつく。その、繰り返しだった。