Over Line~君と出会うために
「はあ~」
本日、何度目かもわからない貴樹の盛大な溜め息。慣れてしまったはずの本来の自分とのギャップに、久しぶりに戸惑いを感じる一瞬。
その溜め息を聞きとめた天宮が、変な顔をした。貴樹がそうやって憂鬱そうな溜め息をつくのは、この頃では珍しいからだろう。
「何だ、その辛気臭い溜め息は」
「だってさぁ」
「鬱陶しいから寄るな」
「冷たいなぁ、順平ちゃんは」
「気持ちの悪い猫なで声を出すな」
「……ひどい」
「全く……お前は子供か」
呆れたように笑いを含んで言って、天宮は貴樹の分もコーヒーを淹れて持って来てくれた。どうやら、少しは気を使ってくれているらしい。
「どうせ、どうにもならないことでうだうだ悩んでいるんだろう。ストレスでもたまってるのか?」
スタジオの隅にうずくまり、誰かが持って来たイルカの抱き枕を胸に抱え込んでいる貴樹を見下ろして、天宮は言う。差し出されたカップを受け取ると、貴樹は口を尖らせた。
「子供とか言うな」
「だって、そうだろ。その態度がお子さまだっての。お前、ひょっとして、相当ストレス溜め込んでるのか」
「ストレスって……俺の、何が」
「言いたいことも言えなくて、自分の中でいろんなことがぐちゃぐちゃになって混乱してるって顔だ。ま、俺もね、実を言うと、あれはやり過ぎだって思っている方なんだけどね」
「……へ?」
本日、何度目かもわからない貴樹の盛大な溜め息。慣れてしまったはずの本来の自分とのギャップに、久しぶりに戸惑いを感じる一瞬。
その溜め息を聞きとめた天宮が、変な顔をした。貴樹がそうやって憂鬱そうな溜め息をつくのは、この頃では珍しいからだろう。
「何だ、その辛気臭い溜め息は」
「だってさぁ」
「鬱陶しいから寄るな」
「冷たいなぁ、順平ちゃんは」
「気持ちの悪い猫なで声を出すな」
「……ひどい」
「全く……お前は子供か」
呆れたように笑いを含んで言って、天宮は貴樹の分もコーヒーを淹れて持って来てくれた。どうやら、少しは気を使ってくれているらしい。
「どうせ、どうにもならないことでうだうだ悩んでいるんだろう。ストレスでもたまってるのか?」
スタジオの隅にうずくまり、誰かが持って来たイルカの抱き枕を胸に抱え込んでいる貴樹を見下ろして、天宮は言う。差し出されたカップを受け取ると、貴樹は口を尖らせた。
「子供とか言うな」
「だって、そうだろ。その態度がお子さまだっての。お前、ひょっとして、相当ストレス溜め込んでるのか」
「ストレスって……俺の、何が」
「言いたいことも言えなくて、自分の中でいろんなことがぐちゃぐちゃになって混乱してるって顔だ。ま、俺もね、実を言うと、あれはやり過ぎだって思っている方なんだけどね」
「……へ?」