Over Line~君と出会うために
誰が選んだメールなのかは知らない。貴樹に嫌がらせをする目的で、スタッフの誰かが紛れ込ませたというわけでもないだろう。いつもは自分でチェックをしてから生放送に入るのに、その日に限って全てがギリギリで、本番前に自分でチェックすることもできなかったのも大きな原因だ。
それでも、貴樹が勢い余って爆弾発言をしてしまうには、要素としては充分だった。
そのメールを読んでいるうちに、貴樹の中で何かがぷちっと切れた。
大好きなアニメを貶められている言葉も、いつもなら笑って流せるはずの気持ち悪いオタクという形容詞も、その時は何故だか許せなかった。
彩と会えないことも、好きなものを好きと言えないことも、デートをしたくたって誰かに見られることを常に警戒しなければならないことも、誰が悪いわけでもない。自分で選んだ仕事の結果だ。だから、今まではそれを受け入れてきたし、それでもいいと思ってきた。不満に思うことはあっても、東城貴樹というのは存在そのものが商品なのだから、という言葉を支えにしてきた。そもそも、そんなことを考えるくらいだったら、最初からこの道を選んだりはしないはずだ。
なのに、細い糸のように張り詰めていた何かが、その瞬間に限界に達したことだけは確かだった。
「……これってさぁ、あれだよね。すごい勝手」
考える間もなく、すらすらと言葉が出てきた。
「俺はさ、この彼氏の方に味方しちゃうんだけどなー。だって、趣味だもん。別に、それで彼女をおろそかにしたわけじゃないんでしょ? だったら、それでいいじゃん。一人の時間に何を見てようが勝手だろっての。それとも、一人の部屋で何をしているか、逐一彼女に報告しなきゃならないわけ? 彼女のことしか考えちゃいけないの? 趣味の時間はどこよ? アニメが好きで何が悪い。アニオタはキモイ、変、そう言いたいわけだよね、この人は。違うの? そういう男は嫌いってことなんでしょ? もし、そうなんだとしたら、この人は俺のことも嫌いだよね。だって、俺、この人の言うところのキモイアニオタだよ。この人の彼氏の言うスイートキューティ、全話DVD持ってますよ、初回盤ですよ。当然でしょ」
そして、思わず付け加えた。
「あすかたんは俺の嫁。これだけは譲れないね」
ブースの外では、皆が唖然としてこちらを見ていた。
それでも、貴樹が勢い余って爆弾発言をしてしまうには、要素としては充分だった。
そのメールを読んでいるうちに、貴樹の中で何かがぷちっと切れた。
大好きなアニメを貶められている言葉も、いつもなら笑って流せるはずの気持ち悪いオタクという形容詞も、その時は何故だか許せなかった。
彩と会えないことも、好きなものを好きと言えないことも、デートをしたくたって誰かに見られることを常に警戒しなければならないことも、誰が悪いわけでもない。自分で選んだ仕事の結果だ。だから、今まではそれを受け入れてきたし、それでもいいと思ってきた。不満に思うことはあっても、東城貴樹というのは存在そのものが商品なのだから、という言葉を支えにしてきた。そもそも、そんなことを考えるくらいだったら、最初からこの道を選んだりはしないはずだ。
なのに、細い糸のように張り詰めていた何かが、その瞬間に限界に達したことだけは確かだった。
「……これってさぁ、あれだよね。すごい勝手」
考える間もなく、すらすらと言葉が出てきた。
「俺はさ、この彼氏の方に味方しちゃうんだけどなー。だって、趣味だもん。別に、それで彼女をおろそかにしたわけじゃないんでしょ? だったら、それでいいじゃん。一人の時間に何を見てようが勝手だろっての。それとも、一人の部屋で何をしているか、逐一彼女に報告しなきゃならないわけ? 彼女のことしか考えちゃいけないの? 趣味の時間はどこよ? アニメが好きで何が悪い。アニオタはキモイ、変、そう言いたいわけだよね、この人は。違うの? そういう男は嫌いってことなんでしょ? もし、そうなんだとしたら、この人は俺のことも嫌いだよね。だって、俺、この人の言うところのキモイアニオタだよ。この人の彼氏の言うスイートキューティ、全話DVD持ってますよ、初回盤ですよ。当然でしょ」
そして、思わず付け加えた。
「あすかたんは俺の嫁。これだけは譲れないね」
ブースの外では、皆が唖然としてこちらを見ていた。