Over Line~君と出会うために
マネージャーにそれ以上ごちゃごちゃと言われないうちに、と、貴樹はそそくさと荷物を纏め、事務所を出た。早く帰ったところで何か予定があるわけでもないが、自分の失態の結果であるあの山を見ているのも何だか嫌だったのだ。
明日からツアーが始まる。
ツアーが始まってしまえば、今まで以上に自由な時間は少なくなってしまう。さっさと帰ろうと思ったのは、それもあった。そして、一番の理由は、彩だった。
今日を逃せば、おそらく、次に纏まった時間が取れる日は随分と先になる。そう思ったからだ。何しろ、ツアーの日程はありえないほどに詰まっていて、東京にいること自体がほとんどなくなってしまうようなスケジュールなのである。
その前に、彩に会いたかった。会って、伝えたいことがあった。
貴樹は少し考えた後、彩の家に行くことに決める。何か手土産を持って行かないと、と考えて、事務所の近くにあるマネージャーお気に入りのケーキ屋でケーキを買った。一緒に食事をした時にケーキも食べていたから、彩がケーキを嫌いというわけではないはずだ。それでも、何を好むかがわからなくて、そこにある種類をひとつずつ全部下さいと言ったら結構な大荷物になった。
さすがにそれを持っては帰宅ラッシュ時の電車に乗れないし、大体、最近は見つかるのが怖くて電車に乗ること自体がほとんどない。今日は車で来ていないから、仕方なくタクシーを拾った。
彩の住んでいるアパートの近くでタクシーを降りて、それから、深呼吸をひとつ。
メールを介して何度もやり取りはしているし、電話だってした。けれど、実際に会うのはまだ三度目という事実に愕然とする。
会った回数なんて、もう関係ないと思っていた。好きになってしまったのは、思い返せば、たぶん、最初からなのだから。
明日からツアーが始まる。
ツアーが始まってしまえば、今まで以上に自由な時間は少なくなってしまう。さっさと帰ろうと思ったのは、それもあった。そして、一番の理由は、彩だった。
今日を逃せば、おそらく、次に纏まった時間が取れる日は随分と先になる。そう思ったからだ。何しろ、ツアーの日程はありえないほどに詰まっていて、東京にいること自体がほとんどなくなってしまうようなスケジュールなのである。
その前に、彩に会いたかった。会って、伝えたいことがあった。
貴樹は少し考えた後、彩の家に行くことに決める。何か手土産を持って行かないと、と考えて、事務所の近くにあるマネージャーお気に入りのケーキ屋でケーキを買った。一緒に食事をした時にケーキも食べていたから、彩がケーキを嫌いというわけではないはずだ。それでも、何を好むかがわからなくて、そこにある種類をひとつずつ全部下さいと言ったら結構な大荷物になった。
さすがにそれを持っては帰宅ラッシュ時の電車に乗れないし、大体、最近は見つかるのが怖くて電車に乗ること自体がほとんどない。今日は車で来ていないから、仕方なくタクシーを拾った。
彩の住んでいるアパートの近くでタクシーを降りて、それから、深呼吸をひとつ。
メールを介して何度もやり取りはしているし、電話だってした。けれど、実際に会うのはまだ三度目という事実に愕然とする。
会った回数なんて、もう関係ないと思っていた。好きになってしまったのは、思い返せば、たぶん、最初からなのだから。